歌手志望だったけど挫折し、診療報酬の資格を取ったら歌うことになった話。

歌手の壁は高かった

子供の頃から歌手に憧れていて、将来は絶対歌手になるんだと思っていた。
小学生の音楽の授業で歌のテストがあっても、クラスメイトは恥ずかしそうにしてた中、自分は緊張せず堂々と歌えていたと思う。
小さな頃からよく音楽を聴いていたおかげか音痴に育つことなく、平均よりは歌が上手かった。
中学、高校と成長するにつれ、友達とカラオケに行く機会も増えていったが、この時だけは女子からキャーキャー言われて気分が良かったw

 

高校を卒業して音楽の専門学校へ進学した。
ボーカル科で日々勉強とレッスンに励む日々が続いた。
この専門学校を出たからと言ってプロの道が約束されるわけでもなく、やはり卒業生のほんの一握りしかプロにはなれない。
その一握りに何としても入るんだと強い気持ちを持っていたはずだったが、だんだんとそのトップレベルの同級生との差を実感していくことに。
自分がどんなに練習してもできない表現を、同級生は難なくやってのける。
そんな姿を何度も目の当たりにするうち、「あぁ、こういう奴らが上に行くんだ」なんてマンガじみたセリフがふと出てしまうことも。
もちろん自分なりに頑張って卒業してからもデモテープを何度も録り、改心の出来のものをレコード会社に送ってみたりも何度もした。
でも、何も良い返事が来たことは一度もなかった。
そうこうしているうちに、同級生のデビューが決まったことを知らされた。
この時点で、自分の心は折れた。
プロの歌手になれる器も実力もないと悟ったのだ。

就職のことを考え始める

歌手の道を諦めたものの、音楽には携わっていたかった。
専門学校を卒業してからもバイトとして続けていたカラオケと楽器屋は辞めることはせず、生活費を何とか稼いでいた。
給料的には問題なかったが、将来を考えるとずっとこのままでいるわけにはいかない。
ちゃんと就職して働かなければ、結婚もできないだろう。

 

でも、子供の頃から音楽一筋でやってきた自分には、できることは他に何もなかった。
だからまずは何も知識がない状態からでも勉強すれば取れる資格を調べた。
誰でも資格を取るのはゼロから勉強を始めるわけで、取れる資格はいくらでもあることがわかった。

 

そんな中で興味が湧いたのは、医療系の資格。
小さい頃から音楽ばかりだった自分に唯一、他に興味があったのは人を癒すということ。
もちろん歌の力でそれができれば理想だったが、既にその夢は破れていた。
それならば、人の体や気持ちを癒す場所である病院で働けるような、医療系の資格を目指してみようと考えた。

決めた資格は診療報酬請求事務能力認定試験

医療系の資格はたくさんある。
医師免許は今から取るには無理だけど、民間資格ならいくらでも取れそうだった。
でも、そんな誰でも簡単に取れるような資格ではダメなこともわかっていた。
就職するためのアピールにはほとんどならないと、色々調べているうちに知っていたからだ。

 

ある程度難しくて、ちゃんと就職時にアピールになる資格と言うのを探した。
見つかったのは、診療報酬請求事務能力認定試験と言うすごく長い名前の資格。
いわゆる医療事務の資格で、その中で最高レベルの難しさを誇るものらしかった。
民間資格ではなく公的資格だからアピール力もばっちり。

 

ただ、気になったのは明確な資格名があるわけじゃなさそうなこと。
診療報酬請求事務能力認定試験って、試験の名前って感じがするじゃないですか。
こればかりは色々調べたけどはっきりした答えは見つからなかった。
履歴書には診療報酬請求事務能力認定試験ってそのまま書いて良いみたいだから、特に問題はないけど。

 

問題は、どうやってこの試験に合格するかってこと。
勉強方法もさっぱり見当がつかなかった。
ひとまず勉強方法で調べてみると、専門の講座があったりするみたい。
でも結構良い値段するようで、一括で支払うのは厳しい感じ。
他の手段はないかなと思って見つかったのは、通信だった。

通信で勉強開始

自分が見つけたのは、たのまなっていう通信。
診療報酬請求事務能力認定試験以外にも、色んな講座があったから、何か勉強してみようかなって思ったら検索してみるといいかも。
自分が受けた講座を見たければ、わざわざ「診療報酬請求事務能力認定試験 たのまな」なんて長ったらしく検索しなくても、「診療報酬 資格」で検索すれば2〜3番目くらいに「目指すは最高峰!〜」ってところがあるからそれを見ればOK。

 

たのまなのありがたいところは、分割払いができるところ。
月3500円で良いから、フリーターの自分でも十分支払っていける。
早速申し込みをして、4日後には教材が届いて勉強を始めた。

 

勉強を始めたばかりの時は、それまでの人生で全く触れてこなかった分野だったからわけがわからなくなって大変だった。
それでも質問があれば電話すればすぐ答えてもらえるし、通信って言っても完全に一人で勉強ではなく思った以上にサポートしてもらえてスムーズに進められた。
カリキュラム上、最初に挑戦した医療保険士の資格は超楽勝。
何て言ったって家で受験できるし、ある意味カンニングし放題なわけで。
でも試験自体簡単だったから、その必要は全くなく、普通に勉強していれば余裕で合格するレベル。

 

簡単な試験だったけど受けたおかげで、診療報酬に関する試験の雰囲気と言うかどういう問題が出るのかを体感できた。
この経験は後々すごく大きかったと実感した。
全くの初心者から勉強して、いきなり診療報酬請求事務能力認定試験に挑戦してたら絶対落ちてたはず。
合格できる人なんてそれこそほんの数人くらいなんじゃなかろうか。

 

その後はすいすいと勉強が進み、問題集を解いて解いて解きまくっていた。
診療報酬請求事務能力認定試験の本番は三時間とすごく長い。
時間の配分と集中力の維持が合格のカギだ。
結果から言うと、何とか一発で合格できた。
その年の合格率は30%を割っていたようで、そんな中合格できたのは大きな自信になった。

就職した病院でまさかの…

たのまなには試験合格後、就職の面倒まで見てもらえた。
が、最初に就職した病院では色々と問題が起き、1年ほどで退職。
(たのまなには何も落ち度はありません。)

 

次の就職先はとりあえず自力で探すかと、近所の総合病院を5件ほど回ってみた。
1件だけ事務員募集のポスターが貼られていたので、患者さんが少なくなったタイミングを見計らって担当者さんに話を通してもらった。
こんなこともあろうかと、履歴書は用意済みだ。
即面接をしてもらうことになり、診療報酬請求事務能力認定試験の合格者であり実務経験もあることから採用が決定。
で、その面接担当者さんが履歴書に目を通していると、自分の出身校を見てすごく興味を持ってくれていた。
そしてこんな話があることを聞かされ、頼まれた。
病棟の患者さん向けに音楽イベントを企画中なんだけど、そこで1〜2曲歌ってくれないかと。
思わぬところで歌の仕事(?)を頼まれて驚いたが、元々歌うのは好きだしもちろんOK。
曲はなるべく大人しめのものでと言われたので、病棟の患者さんの年齢層を聞いた上でいくつかピックアップし、これが良いんじゃないかと言われた中島みゆきの糸などに決定。
自宅で練習の日々を過ごした。

 

イベント当日、ホールに集まった患者さんは40人ほど。
専門学校生時代に300人以上を前に歌った経験があるので人数に物怖じすることはなかったものの、やはり少し緊張した。
MCは他にいたので歌だけに専念できたのが救いで、特に大きなミスもなく出番は終了。
出番の後は自分もホールの隅の席で観賞させてもらった。
すると何人もの患者さんに話しかけられ、「すごく良かった。」「励まされた。」などと言ってもらえて、恥ずかしながら涙が止まらなくなってしまった。
歌手になることは諦めたけど、自分の歌で人の心を動かすことができたのかと思うと、何だか夢が叶ったような気になったからだ。

イベント後

人前で歌う本当の喜びを味わってしまった自分は、自ら進んで患者さんたちを集めて歌いに行くようになっていた。
病棟の患者さんとは言え元気な人は元気で普通に歩き回っている。
ベッドの上で休んでいる患者さんの邪魔にならないような歌を選び、月に1回30分ほど歌わせてもらっている。

 

もちろん、自分の仕事に影響は出ていない。
むしろ上司からも褒められるくらい。
こういうイレギュラーなことをする職員は煙たがられても不思議ではないと思うんだが、良い病院に就職できたということなんだろう。
大好きな職場となってこの病院でこれからも働いて、歌うことの喜びを教えてもらった恩返しをしていきたいと思う。